Wordで作る方法・文字設定完全解説
同人小説原稿を失敗しないための最終設計ガイド
「Wordで同人誌は作れますか?」
結論から言うと、作れます。しかも十分実用レベルで。
ただし設定を理解せずに作ると、事故が起きます。
- ノドが読めない
- 文字が詰まりすぎる
- スカスカになる
- ページ数がズレる
この記事は、同人小説に特化したWord原稿の完全設計書です。
このページだけで入稿まで辿り着ける内容にしています。
1. Wordで同人小説は作れるのか?
結論:問題なく作れる
ただし向いている用途があります。
向いているケース
- 小説(テキスト中心)
- A5/B6サイズ
- モノクロ本文
- 〜400ページ程度
向いていないケース
- フルデザイン本
- 写真・画像多用
- 凝ったレイアウト
小説本であれば、Wordは十分実戦投入可能です。
2. 最重要|最初にやるページ設定
ここが全ての土台です。
2-1. 用紙サイズの設定
【レイアウト】→【サイズ】→【その他の用紙サイズ】
よく使うサイズ
| サイズ | 用途 |
|---|---|
| A5 | 同人小説の王道 |
| B6 | 少し小ぶり |
| A6 | 文庫サイズ |
迷ったら A5 でOK。
1ページに入る文字数が多いので、ページ数が減る=印刷費が安いです。
2-2. 余白設定(最重要)
【レイアウト】→【余白】→【ユーザー設定の余白】
推奨目安(A5小説)
- 上:20mm
- 下:20mm
- 外側:15mm
- 内側:25mm(ここが重要)
なぜ内側を広くするのか?
→ 製本するとノド側が沈むため。
ここをケチると「読みにくい本」になります。
3. 小説用フォント設定の完全解説
3-1. フォントの選び方
明朝体(基本)
小説の本文フォントとして、まずは「明朝体」を選ぶのが基本です。
明朝体は、横線が細く縦線が太いという特徴があるため、
文字が密集しても視覚的に「黒く潰れにくい」という利点があります。
そのため、長文の読書においてもしなやかに視線を誘導し、
長時間読み続けても目が疲れにくいのが大きなメリットです。
結論としては、小説は明朝体一択でOK
ゴシック体
明朝体と対照的な選択肢となるのが「ゴシック体」です。
一本一本の線が均一な太さで構成されているため、視認性が高く、親しみやすい印象を与えます。
装飾が少ない分、個人の日常や思考を綴るエッセイ向きの書体と言えるでしょう。
また、解像度の低いデバイスでも文字がはっきりと表示されるため、
非常にWeb寄りの印象が強く、ブログ記事やSNS発の作品とも相性が抜群です。
読者に「堅苦しさ」を感じさせず、現代的で軽快なリズムで読み進めてもらいたい場合に最適な選択肢となります。
3-2. フォントサイズ
フォントサイズは単独で決めるものではなく、
- 判型(A5 / B6 / A6)
- 行間
- 行数
- 1行あたりの文字数
- 読者の想定年齢
このバランスで決まります。
■ A5(148×210mm)
最も多い同人小説サイズ。
- 推奨範囲
9.5pt〜10.5pt - バランス例
10pt → 40字×18行前後
10.5pt → 38〜40字×17行 - 特徴
紙面が広いので小さすぎるとスカスカに見える。
A5なら10pt以上が安定。
■ B6(128×182mm)
ややコンパクト。
コミックスサイズとも言われます。
- 推奨範囲
9pt〜10pt - バランス例
9pt → 40字×19行
9.5pt → 38字×18行
10pt → やや大きめ印象 - 特徴
10.5ptだと窮屈になりやすい。
9.5pt前後が黄金帯。
■ A6(文庫・105×148mm)
文庫サイズ。
一般書籍風にしたいならこのサイズ。
- 推奨範囲
8.5pt〜9pt - バランス例
8.5pt → 商業文庫に近い
9pt → 少し読みやすめ - 特徴
10pt以上にすると行数が減り、ページ爆増。
| 判型 | 安定帯 |
|---|---|
| A5 | 10pt前後 |
| B6 | 9.5pt前後 |
| A6 | 8.5〜9pt |
なぜ判によって文字サイズが変わるのか?
理由は単純です。
- 紙面面積が違う
小さい判型で大きな文字を使うと行数が減る。 - 視線移動距離が変わる
横幅が広いと大きい文字でも読める。 - ページ単価に直結する
1pt違うだけで総ページ数が10〜20P変わることもある。
最終判断の基準
サイズを決めるときは必ず「紙で」確認しましょう。
- 試しに5ページ印刷
- 実際にめくる
- 10分読む
画面では絶対に判断しないこと。
3-3. 行間(固定値必須)
【段落】→【行間オプション】
行間は「固定値」にします。
目安:文字サイズ × 1.8〜2.0
例:10.5pt → 18pt前後
行間が自動だとズレます。
必ず固定値で。
なぜ「固定値」にするの?
Wordの初期設定は「1.5行」や「倍数」になっています。
これだとレイアウトが安定しません。
- フォント変更でズレる
- 改ページで微妙に揺れる
- PDF化で差が出ることがある
そのため「固定値」での編集が推奨されます。
実際の操作手順(クリック順)
- 本文をすべて選択(Ctrl + A)
- 右クリック →「段落」
- 「行間」のプルダウンを開く
- 「固定値」を選択
- 右側の数値入力欄に数字を入れる
これだけです。
難しそうに見えますが落ち着いて頑張って!
判型別・完成数値
特にこだわりがなく、とりあえずそれっぽくしたい初心者は計算しなくてOK。
行間は「固定値」で設定し、下記の数値をそのまま入力してください。
| 判型 | 本文フォントサイズ | 推奨行間(固定値) |
|---|---|---|
| A5 | 10pt | 18pt |
| A5 | 10.5pt | 18〜19pt |
| B6 | 9.5pt | 16〜17pt |
| A6 | 9pt | 15〜16pt |
実際に確認する方法
- 3ページ印刷
- 机に置いて30cm離れて見る
- 行と行がぶつかって見えないか確認
絶対に画面だけでは判断しない。
4. 字詰めとページ設計
字詰めは「読みやすさ」だけでなく、ページ数=印刷費=背幅=表紙設計に直結します。
ここが設計の核心です。
判型別の目安
| 判型 | 目安文字数 |
|---|---|
| A5 | 38〜40字 |
| B6 | 35〜38字 |
| A6 | 32〜36字 |
判型が小さくなるほど文字数は減ります。
1行の文字数はなぜ38〜40文字なのか
人間の視線移動に限界があるからです。
横組み日本語の場合、
- 35字未満
行が短く、リズムが途切れる
何度も目を往復させないといけないので疲れる - 38〜40字
視線移動が自然 - 45字以上
視線の移動距離が長いので疲れる
目が滑り、内容が入ってこない
A5本文で40字前後が多い理由は、
商業小説の実測値がこの範囲に集中しているからです。
1ページの行数はなぜ16〜18行なのか
可読性は“縦密度”で決まります。
行数は「なんとなく」ではなく、この4要素で決まります。
① 行間比率
② 文字サイズ
③ 用紙高さ
④ 視線のリズム周期
人間の縦スクロール耐性は、約100〜110mmで一呼吸。
17行 × 6.35mm ≒ 108mm
このあたりが「読んでいて疲れにくい縦量」です。
ページ数の正確な計算方法
単純計算は、総文字数 ÷(1行文字数 × 行数)。
つまり8万文字だったら、80,000字 ÷(40×17)= 約118P。
しかし実際は下記の要素が入ります。
- 改行
- 空白行
- 章扉
- 奥付
- 白ページ
実務的安全計算式
計算結果 × 1.05〜1.1
これが実際の本文総ページ目安です。
適度に改行されたりセリフが入る場合の計算です。
セリフ多め、改行多めの人などは「×1.4」とかでもいいかもしれません
5. 禁則処理
これをやらないと一瞬で「不慣れな同人誌」感が出ます。
設定手順
- Ctrl + A
- 段落設定
- 禁則処理にチェック
本当に確認すべき項目
- 行頭禁則
「、」「。」が行頭に来ない - ぶら下がり
会話文の「」が綺麗に揃う - ダッシュ処理
「――」が1本で改行されない - 三点リーダ
「…」は必ず2個セット(……)
禁則だけでは足りない理由
Wordは完全ではありません。
最終的にはこれをやらないと事故ります。
- ページ単位で目視確認
- PDFで再確認
6. PDF出力
Word → PDF変換は「ボタン一つ」ですが、事故が起きるのはこの工程です。
正しい出力手順
- ファイル
- エクスポート
- PDF/XPSの作成
- 「標準(オンライン発行および印刷)」を選択
- オプション → 「ISO 19005-1準拠(PDF/A)」にチェック推奨
必ず確認すること
- フォントが埋め込まれているか
- 相手環境にフォントが無い
- 別フォントに自動変換
- 字幅が変わる
- 改行位置がズレる
- 行数が変わる
- 行間が「倍数」設定
- フォント埋め込み失敗
- 行間比率変化
- ページ全体ズレ
- 相手環境にフォントが無い
- ページサイズがズレていないか
- Word内部はA5 → PDF出力がA4扱いなど
- 上下に白帯ができる
- トリミング不能
- 再入稿
- Word内部はA5 → PDF出力がA4扱いなど
- トンボ不要か確認
- 余白が消えていないか
印刷所のマニュアルが最優先です
出力後の検証方法
ただ保存して終わりではありません。
Adobe Readerで開く
ファイル → プロパティ → フォントタブ確認
全フォントが「埋め込みサブセット」になっているか確認。
Ctrl+D → 詳細 → ページサイズ
A5なら 148×210mm になっているかを確認します。
印刷所入稿前の最終確認フロー
- フォント埋め込み確認
- ページサイズ一致
- ノド余白再確認
- 白ページの有無確認
- 総ページ数が4の倍数
最後の「4の倍数」は重要。無線綴じは4P単位です。
印刷所によっては偶数であればOKなども。
使う予定の印刷所の入稿規定を確認してください。
7. まとめ|設計が思考コストを削る
Wordでも、同人小説は問題なく制作できます。
大切なのは「作れるかどうか」ではなく、「どう設計して作るか」です。
判型を決め、余白を確定し、フォントと文字サイズを選び、行間を固定値にし、1行の文字数と1ページの行数を安定させる。
そこから総文字数を逆算してページ数を出し、背幅を計算し、最後にPDFで崩れていないか検証する。
ここまでが本文設計の一連の流れです。
40字×17行なら1ページ約680字。
8万字なら約118ページ前後。
このように数値で把握できていれば、ページ数のズレや背幅ミス、入稿事故は大幅に減ります。
レイアウトは感覚ではなく構造で決まります。
設計を最初に固定すれば、「これでいいのか?」という迷いが消えます。
そのぶんの思考コストを、物語や表現そのものに使えるようになります。
レイアウトで悩まないための基準として、この記事を保存版にしてください。
